展覧会
過去の企画展
古屋誠一展 Aus den Fugen
会期: 2007年 1月 27日(土)−4月3日(火)
主催: ヴァンジ彫刻庭園美術館
静岡県西伊豆に生まれた古屋誠一は大学を卒業後、シベリア経由でヨーロッパに渡り、1978年オーストリアのグラーツで妻となる女性、クリスティーネ・ゲッスラーと出会う。共に暮らす女性を撮影するという日常的な営みは、出会いから7年半後の1985年に突然の中断を余儀なくされる。1983年頃から精神を病んだクリスティーネは息子と3人で住んでいた東ベルリンのアパートから身を投げて自ら命を絶ち、残された彼女のポートレイトはその意味を変えてしまったからだ。妻の死から十数年を経て整理された「遺影」は古屋の手によって写真集として世に出され、彼女の姿は「写真家古屋誠一」と切り離せないものとなった。「クリスティーネ」は死後の生を与えられているかのようでもあり、その存在は彼女亡き後に撮られた古屋の写真にも影を落としているように見える。
見る度ごとに違う細部が立ち上がるその写真は引き延ばされ、印画紙の上に焼きつけられた時、写真集とは別の相貌を見せるだろう。古屋の写真行為からは機械によって捉えられ、物質として残された映像をどのように身体化していくのか、私的な記憶という共有不可能なものがいかにして他者に向かって開かれていくのかという回路の一端が垣間見られる。そして、それは媒介としての写真の可能性そのものであり、個人的なアルバムから抜け出し、はからずも「作品」となってしまった写真の在りようを我々に見せてくれるだろう。今、古屋誠一は自らの写真の中に何を見るのか、そして「死後の生」を生きる者からの眼差しにどのように応えるのだろうか。
未発表作品も展示予定。