クレマチスの丘のイベント・ワークショップ

 

NOHARA BOOKS



NOHARA BOOKS「はじめまして、放散虫」展(2020年8月6日〜9月29日)会場内にて、みなさまから頂いた質問と先生方の回答を紹介します。


展示「はじめまして、放散虫」の詳細はコチラ

 




放散虫は何故進化しているのですか。 進化した事(形状)のメリットは何ですか。




放散虫にかぎらず、生物は形やくらし方(形質)をいつもかえていっています。 そのなかで何世代にもわたってのこる形質をもつことを進化といいます。どんな生きものでも進化をしているといってもいいでしょう。「○○がおこったからこういう形になった」のではなく、「いつでも進化していて、環境にあった性質をもったものが生きのこった」といったほうがよいかもしれません。
放散虫もいろんな形に進化して、現在も生き残っています。一方で、恐竜のように,昔は大いに栄えたけれども,すでに絶滅してしまった放散虫のグループもあります。 進化をすることで、環境の変化にあったものが、生きのこる確率が上がるともいえます。
でも、とくに環境の変化のような事件がなくても、絶滅したり、生きのこったりするので、進化はときに気ままなものかもしれませんね。 放散虫の進化の特ちょうは(ほかのとても小さな生きものの多くもそうですが)、進化のスピードが速いことです。 そのため、時代ごとに特ちょう的な放散虫が生まれ、いまの地質学では地層の年代を知るのに大活躍しています。

[質問]8月17日 [回答]8月21日





放散虫の骨は何でできていますか?




窓ガラスや、ガラスコップと同じ二酸化ケイ素からできています。

[質問]8月17日 [回答]8月21日





どうしてこんなにも複雑で緻密な構造ができるのですか?どうやってつくられるのですか?
放散虫、はじめて知りましたがとても美しかったです。




美しく多種多様な形が放散虫の特ちょうです。 この形がつくられるしくみは、まだわかっていません。それは放散虫の大きな謎であり、研究するうえでの魅力です。 骨は二酸化ケイ素でできていて、この形は遺伝子の設計にもとづいていると考えられています。とつぜん、このような形をしたものが生まれたわけではなく、最初は単純なつくりだったものが、長い時間をかけてさまざまな形に進化しました。とはいえ、現在生きている放散虫がいちばん複雑な形をしているというわけでもなく、形づくりの謎は奥が深いといえます。
私たちの骨格であるカルシウムよりも二酸化ケイ素は比較的自由に形を変えることができます。力を加えても折れにくいガラス質の骨格をもったことが、放散虫がここまで多様な形をもつことになった秘密なのかもしれません。

[質問]8月17日 [回答]8月21日





ほうさんちゅうが好む場所や気温について知りたいです!




海の水面近くから深いところ(水深5000mほど)まで見られます。
いろいろな環境に、それぞれあった放散虫がいます。暖かい海の方が種類が多いようで、水深200mまでの浅い海に多くの放散虫がすんでいます。深い海にも放散虫がいることはわかっていますが、種類も数も多くはありません。深いところにすむ放散虫は、進化のスピードが遅いといわれています。

[質問]8月17日 [回答]8月21日





ほうさんちゅうは、どうやってたべものをみつけるのですか?




放散虫は、眼などの感覚器官をもたない、単細胞の原生生物です。食べものは見つけるのではなく、たまたま出あった食べものを取りいれています。捕まえた食べものをすべて消化するのかどうかは分かっていません。

[質問]8月17日 [回答]8月21日





放散虫はどうやってふえますか?




分裂します。2つに分裂するものや、体の中に複数のクローンをつくってから分裂するものがいます。 じつは放散虫は飼育しづらい生きもので、ふえかたについての研究もこれからの分野です。 研究が進めば、これからいろいろなことがわかってくるはずです。
少しむずかしいですが、いわゆるn世代(染色体が1セット)と2n世代(染色体が2セットある倍数世代)があると予想されています。このちがいは、単純な複製=クローンをうむn世代と、遺伝的にバリエーションができやすい2n世代というちがいがあります。 ほかの原生生物でわかっていることから考えると、ほとんどがn世代の個体で、まれに2n世代ができると思われます。同じ種でもn世代と2n世代とでは、大きく形がちがうかもしれません。

[質問]8月17日 [回答]8月21日





放散虫は何色ですか?




基本的に透明です。体の中に藻類を取りこんで共生しているものもいて、そうしたものは藻類の色の黄や緑に見えます。放散虫の細胞にみられる赤色は,蓄えられている栄養分だと考えられています。

[質問]8月17日 [回答]8月21日





放散虫が体の中に入ったらどうなりますか?




とても小さいのでだいじょうぶでしょう。魚にも、ほかの食べものといっしょに放散虫を食べちゃっているものもいます。 人間にとって栄養になるかどうか・・・・きっとならないのではないでしょうか。
松岡先生が、大学の授業で海水浴で海水を飲んだら放散虫がまじっているかもしれないといったら、その日の授業の感想に,エヘンムシに似ていてのどの調子が悪くなりそうと書いた学生がいたそうです。

[質問]8月17日 [回答]8月21日





放散虫の他に、二酸化ケイ素からできている生物はいますか?




珪藻という藻類がいます。放散虫のようにとても小さな生きもので、世界中の海や川や湖にいます。細胞のまわりに二酸化ケイ素からできている殻をもっています。植物プランクトンのなかでもっとも豊富で、どこにでも見られるなかまです。
珪藻は底生生物として川底の岩などにくっついて生活する種類もいます。アユの主食は珪藻です。水そうなどに茶色いぬるっとしたものがつくことがありますが、あのなかには珪藻がいます。
少し大きな生物としては、海綿動物がいます。体の中に二酸化ケイ素からできた「骨針」をもっています。

[質問]8月24日 [回答]8月26日





・放散虫の骨は、切ることができますか?
・生きている放散虫を二つに切断すると、どうなりますか?




放散虫はとても小さいので特殊な道具が必要となります。
研究では、放散虫の細胞の内部をくわしくみるために「超薄片」とよばれるスライスをつくることがあります。切るためによく使うのは、ダイヤモンドでできた刃です。二酸化ケイ素の骨もいっしょに切ると刃こぼれを起こしてしまうことがあるので、フッ酸という強い酸で、骨を溶かしてから細胞を切る方法がとられます。
2つに切断された放散虫は死んでしまいます。

[質問]8月24日 [回答]8月26日





放散虫は何歳まで生きますか? どうしたら死んでしまいますか?(水中以外でも生きれますか?)




放散虫は、海水の中でしか生きることはできません。
そして飼育がむずかしいので、どれくらい生きるか調べるのがむずかしい生きものです。ただ一世代の寿命はそれほど長くはないはずで、分類上近い「有孔虫」という生きものがいますが、これらの寿命が数週間から数か月ぐらいですので、それくらいかと想像できます。
死んでしまう原因は寿命! としかいいようがないのですが、そのほかにほかの生きものに食べられてしまう(たまたまもふくみます)こともあるでしょう。
これまで飼育実験がためされているのは、熱帯や亜熱帯の表層海水にすんでいる放散虫がほとんどです。深海や緯度の高い海の冷水にすんでいる放散虫については、生きているすがたさえもよくわかっていません。おそらく、あたたかい表層海水にすんでいる放散虫よりも長生きしているのではないかと予想されます。

[質問]8月25日 [回答]8月26日





なぜ骨がとうめいなのですか? 知りたいです。




放散虫の骨が透明なのは、放散虫の骨の主な成分の二酸化ケイ素(シリカ)が透明だからです。ガラスコップや窓ガラスも同じく二酸化ケイ素でできています。二酸化ケイ素が多ければ多いほど無色透明になり、混ざり物の種類や量などで色がちがっています。色ガラスは混ざり物の色なのです。放散虫の骨は二酸化ケイ素が90%以上あります。残りの成分は水です。
同じく二酸化ケイ素でできている石英(水晶)は透明です(紫水晶は鉄イオンの影響なのですが、ちょっとむずかしいのでここでははぶきます)。黒曜石は70〜80%、 酸化アルミニウムや酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄などがまざっています。

なぜ、放散虫が二酸化ケイ素の骨をもつようになったか、それはまだ大きな謎で、とても興味深い研究テーマです。放散虫のほかに二酸化ケイ素の骨をもつ生物としては、海綿、珪藻、珪質鞭毛藻などがいます。

[質問]8月30日 [回答]9月3日





うみってどんなほうさんちゅうがあるんですか?




うみには いろいろな しゅるいの ほうさんちゅうが
たくさん くらしています。
みんな ぷかぷか ただよって いるのですよ。
ほうさんちゅうは おおむかし(5おくねんまえ!?)から いるので
そのあいだにも いろいろな かたちの ほうさんちゅうが うまれて、
いまは もう いないものも います。
なまえが ついているものだけでも 1まんしゅ もいます。
ついていないものは もっともっと おおいのです。


[質問]8月30日 [回答]9月3日





放散虫がトゲトゲな形をしている理由は何かあるのでしょうか?
お互いがくっつくとか、水の抵抗を大きくするとか??




放散虫の形はとても多様です。 いろいろな方向にトゲトゲしているもの、ある方向にトゲトゲがのびているもの、トゲトゲしていないものもいます。
放散虫の骨や殻、トゲは内骨格で、トゲの周りにはアメーバ状の軟体部があったといえます。トゲトゲしているのは、放散虫の軟体部である仮足が外側に向いてのびていたことに関係しています。トゲトゲのある放散虫は,その名前の由来でもある放射状にのびる仮足をもっていた種である証拠ともいえます。
放散虫にかぎらず、生きものはいろいろな形に進化していて、そのときの環境に合った姿形やくらし方をしたものが生きのこっていきます。遠くまでただよって生息範囲を広げられる形、食べものをとらえやすい形など、生きのこるのに有利な形というものがあります。
放散虫の場合はいろいろな形がありすぎて、何が生きのこりに有利だったのかは、判断しづらいのです。
放散虫は、自由にいろいろな形に進化しています。その結果、環境に適応する可能性は高くなります。

[質問]9月5日 [回答]9月14日





8/17の質問とかぶりますが・・
増え方がクローンを作成する・・ということは(単細胞ということがよくわかってないのですが)、ずっと同じ個体が何世代にわたって生きているということでしょうか?




同じ遺伝子をもつものが、世代を引き継ぎながら生きていくということです。
個体の寿命はそれほど長くありません。飼育実験からは、熱帯・亜熱帯の表層海水にすむ放散虫は1ヶ月程度の寿命をもつことがわかっています。
放散虫の世代交代については、実証的な証拠はほとんど得られていません。有孔虫からの類推で語られているのが実情です。生物としての放散虫を理解するためには、世代交代を飼育実験によって明らかにする必要があります。

[質問]9月5日 [回答]9月14日





放散虫の新種っていますか? 珍しい放散虫っていますか?




新種だらけです!
種を記載する学術論文が公表されてはじめて新種として認知されます。新種があまりにも多すぎて、記載に手が回らないというのが実情です。ヘルパーを募集中です!
今回展示している放散虫といっしょに見つかったもののなかにも、数多くの名前のない放散虫がいます。化石の形から判断するので、どの範囲のかたちまでを同じ種と判断するのか?とか、1個体しかみつからない放散虫を新種として名付けることが適正なのか?といった問題を,ひとつひとつ解決して新種が誕生します。
5億年にわたる放散虫の進化の歴史を通覧すると、ジュラ紀末から白亜紀初頭に放散虫の種の数が最大であるといわれています。今回示しているマリアナ海溝からの岩石試料に400種以上の放散虫が含まれていることも、この認識の根拠となっています。これだけたくさんの種を含んでいる岩石試料なのに、日本列島からは普通に産出するのに1個体も含まれていないという種も複数あります。

現在の放散虫で、普通の場所で普通に見つかるものは調べられていて、だいたい名前がついています。 まだ調べられていない海域については、どのような種がいるのかが分かわかっていません。殻を持たない放散虫とか、殻が保存されにくい放散虫とかであれば、かなりいることでしょう。 これからの調査で未発見の現生種に出会う可能性は高いと思います。

[質問]9月5日 [回答]9月14日





生きている放散虫の写真が見たい。葉緑体が入っているの?




会場で流れている動画を見てください。
生きている放散虫が出てきますよ。
ついている色は褐藻などの藻類の色です。
葉緑素が入っている放散虫は見つかっていませんが、褐藻などの藻類と共生しているものは見つかっています。
藻類が作った生産物を栄養としてもらっています。

[質問]9月12日 [回答]9月14日





ほうさんちゅうは性別はありますか?




単細胞の原生生物なので、ありません。

[質問]9月20日 [回答]9月25日





放散虫の名前はあるんですか?




あります!
名前(学名)がついているものは、絶滅した種も含めると10000種ほどです。

[質問]9月20日 [回答]9月25日





形に決まりはありますか?




ボールのような球形、平らな形、塔のような形をしたものが多いです。塔のような放散虫を私たちは「タケノコ型」ともよんでいます。
そのほかにもいろいろな形があって、多様な形に進化しています。

[質問]9月20日 [回答]9月25日





0.1mm以上おおきい放散虫はいますか? いるとしたら、何mm?




骨だけでいうと、だいたいのものがそれくらいです。
骨をおおうアメーバ状の身体やそこからのびる仮足まで入れると2〜3mmのものがいます。
放散虫には、なかま同士でたくさん集まって、群体(コロニー)をつくる種類もいます。コロニーの大きさは数センチ以上になります。


[質問]9月20日 [回答]9月25日





ほうさんちゅうはどのようなものをたべるのか?




植物プランクトンを食べるものがいます。
それに自分のからだのなかに藻類がくらしているものがいて、そういった放散虫には、その藻類が光合成をしてつくったものをもらうものがいることがわかっています。

[質問]9月20日 [回答]9月25日





放散虫のもようは一つ一つちがうのですか?




放散虫は透明で、もようはありません。
中の骨や、からだの中にくらしている藻類がもようのように見えることがあるかもしれません。
もしも質問の意味が「形」ということであれば、種が同じであれば、同じような形のものがたくさんいます。ヒトの形と同じで、まったく同じ形のものはないと思います。

[質問]9月22日 [回答]9月25日





放散虫の形をまねしているアーティスト作品はありますか?




なにしろ、放散虫は魅力的な形をしています。
19世紀に放散虫の形が知られるようになってから、多くの芸術家が影響を受けてきました。

[質問]9月22日 [回答]9月25日





他の方の質問への回答から、研究は途上なんだと感じました。そこから、図鑑はあるのかな、と気になりました。あるのでしょうか?
もしまだならば、どれくらいの年月、またどのような段階に至れば、機は満ちるのでしょうか?




いまのところ、放散虫専門でつくられている本は、日本では絵本『ほうさんちゅう ちいさな ふしぎな 生きものの かたち』だけです。
図鑑やほかの専門書については、いつか実現したいですね。

[質問]9月22日 [回答]9月25日





放散虫のからだには、上下左右というか、頭、足はあるのでしょうか?
展示された写真をみていると「ある」ように見てしまったのですが、実際はどうなのでしょう?




私たち哺乳類のような頭や脚はありません。
放散虫(Nassellaria)の骨の部位をあらわす用語として、頭(cephalis)や足(feet)があります。骨ができるとき、頭の方からつくられ、最後あるいは最後に近い時期にあしができます。らせんの形をもつ放散虫には、右巻きと左巻きがあることになります。

[質問]9月22日 [回答]9月25日





放散虫はじめて知りました!放散虫とプランクトンとの関係がよくわかりません。
イコールではないのですか?一番の違いはなんですか?




プランクトンとは、水中にくらす生きものを、くらしかた(生活型)でわけたときのよび方のひとつです。

・プランクトン=自分で泳ぐ能力はもたず、ただよってくらすもの=クラゲなど
・ネクトン=泳ぐ能力があって、移動しながらくらすもの=魚など
・ベントス=水底にくらすもの=ヒトデなど表面にいる生物と,ゴカイのように泥の中にいる生物とがあります.サンゴのように固着する生物もいます。

「水中にくらす小さいもの」という意味だと思っている方も多いのですが、エチゼンクラゲは、かさの直径が2メートルをこえるものもいるので、大きさは関係ありません。ウニやカニのなかまのように幼生の時はプランクトン、成長するとベントスとなるものもいます。

[質問]9月28日 [回答]10月4日





ほうさんちゅうのほんとうの小ささがみたいです!




顕微鏡で観察できるイベントなどに参加いただくのがいいと思います。
下記のSNSで情報発信中です。

Twitter 絵本ほうさんちゅう&写真展放散虫 @housanchu_ph
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[質問]9月28日 [回答]10月4日





アメーバのようなものに骨があるなんて!知らなかった・・ 
彼らにとって骨の必要性ってあるんですか?




放散虫は,ほかの多くの生き物とおなじように、5億年前に骨をもつようになりました.5億年よりも以前は,骨のない生き物としてくらしていたことになります。
何かいいことがあるので、骨をもつ生き物を続けているのだと考えられます。
一般的には、ほかの生き物からの攻撃に対する防御や軟らかい体を支える役割が重要だとされています。これらに加えて、浮き沈みに関係する「おもり」としての役割もあると思われます。
なお、現在生きている放散虫の中には骨をもたない放散虫もいます。

[質問]9月29日 [回答]10月4日



質問に回答してくれる先生方


松岡篤氏(新潟大学)

1958年 兵庫県生まれ。アンモナイトの研究者を目指して大阪市立大学に入学。在学時に放散虫の研究が日本の地質の認識を大きく変えた「放散虫革命」に遭遇し、放散虫研究を開始する。 プレートテクニクス分野の付加体研究で理学博士の学位取得。1987年 新潟大学講師に着任、助教授をへて2002年より教授。2014-2017年 国際放散虫研究者協会会長をつとめる。


スタジオ・ポーキュパイン(STUDIO POCUPINE)

ポーキュパインはヤマアラシのこと。「世界の人々を全員自然好きにしてしまうのだ!」の野望のもと、生物、自然科学専門に本の企画、編集、執筆、写真撮影を行うちょっとしたショッカーのような組織。放散虫には生物、アート、デザインといったさまざまな要素をもつ可能性を感じ魅かれます。手がけた本に『つばめのハティハティ』(アリス館)『鳥類学者無謀にも恐竜を語る』(技術評論社)、『チリメンモンスターのひみつ』(偕成社)など多数。
http://www.studio-porcupine.com/