ガーデナーのお気に入り
クレマチスガーデンで働くガーデナーが、園内のクレマチスから注目の品種を紹介。
品種紹介のほか、管理している上での裏話や苦労話など、こぼれ話も紹介します。




  ・ヘッドガーデナー 阿部 「アフロディーテ・エレガフミナ」
  ・ガーデナー 真田 「パルセット」
  ・ガーデナー 三浦 「フルディーン」
  ・ガーデナー 矢野 「ルイーズ・ロウ」
  ・ガーデナー 高嶋 「アルバ・ラグジュリアンス」
  ・ガーデナー 丸橋 「テッセン、ヴィエネッタ」
  ・ガーデナー 杉山(準備中)


ヘッドガーデナー 阿部
「好きなクレマチスを教えてください」「おすすめのクレマチスは?」というご質問をよくいただきます。 多彩な花色、花形、草姿をもつ数多くの魅力的な品種の中から、1品種だけを選ぶ作業はいつも悩んでしまいます。 今回は私にとって大変思い出深い1品種についてのお話をさせていただきます。

[アフロディーテ・エレガフミナ]
Aphrodite Elegafumina
系統:インテグリフォリア系
花の咲き方:新枝咲き
剪定方法:強剪定
開花期:5〜11月
草丈:2〜3m
花径:10〜12cm
花色:濃紫
作出国:日本

クレマチスは毎年世界中で新しい品種が次々と育種され紹介されています。 日本で作出された品種も数多く、世界の愛好家や庭でも愛され、注目をされている品種が多く存在します。
クレマチスの育種家、宇多川正健先生が作出されたアフロディーテ・エレガフミナもその一つ。まるでビロードのような目を引く質感の花色と、その花期の長さ、四季咲き性の強さ、多花性で強健という特性で数多くのクレマチスファンを虜にしています。

クレマチスガーデンの顧問でいらっしゃる金子明人先生からご紹介をいただいて、都内在住の宇多川先生のご自宅を訪れたのは、2002年にクレマチスガーデンが開園をしてから数年が経過したばかりの頃でした。
まだクレマチスの世界での経験の浅い私を、宇多川先生とお姉さまが温かくお迎えくださったことがまるで昨日のことのように思い出されます。ご挨拶もそこそこに、先生はクレマチスの育種についてお話を始められました。その具体的な方法を実際にお使いになっている道具を見せてくださいながら、 手振りを交えて、一つ一つ丁寧に説明してくださった先生。そのクレマチスへの真摯な姿勢に強く心打たれたことを覚えています。
アフロディーテ、火岳(かがく)、九重(ここのえ)、キャッツアイ、パルセット、ロワール、大河(たいが)をはじめ、数多くの名花を世に送り出した宇多川先生はご闘病の後、惜しまれながらそのクレマチス人生を閉じられました。

クレマチスの丘では、お客様を最初にお迎えするチケットセンターのパーゴラ下にアフロディーテ・エレガフミナを植栽しています。例年、開花は5月から。
四季咲き性のため、剪定を数回行って二番花、三番花と咲かせますが、アフロディーテ・エレガフミナは12月でも、驚くことに翌年の1月に入っても開花が継続していることがあります。春に開花する一番花と同じぐらいの花数、花のサイズで、気温の高い時期に開花期を迎える二番花を咲かせることにも驚かされます。
今年もアフロディーテ・エレガフミナの開花期が始まりました。チケットセンターでこの花に出会うたびに、宇多川先生の穏やかな笑顔と、クレマチスにかける熱意を思い出されます。


クレマチスの丘、ヴァンジ彫刻庭園美術館のチケットセンター前で咲く、アフロディーテ・エレガフミナ


ガーデナー 真田
クレマチスの育種家、宇田川正健先生が作出された、アフロディーテ・エレガフミナを親戚に持つ、アフロシリーズのひとつです。アフロディーテ・エレガフミナも素敵ですが、パルセットも可憐でとてもかわいらしい品種です。
クレマチスガーデンでは、ホワイトガーデン、ポール仕立てでご覧いただくことができます。

[パルセット]
Parusetto
系統:フロリダ系
花の咲き方:新旧両枝咲き
剪定方法:中剪定
開花期:5〜11月
草丈:1.5〜2.5m
花径:4〜10cm
花色:薄いピンク
作出国:日本

ここがみどころ!

パルセットは、蕾がピンク色で、花芯が紫色をしています。咲き始めは、花弁にピンク色の筋が出るのが特徴です。時間が経つとピンク色の筋はなくなり、白色になります。蕾、咲き始め、開花期と、段々と色が変わっていくので、その変化をぜひ見てほしいですね。

美しく、控えめに

パルセットは、他のクレマチスと比べると華奢な品種です。私が担当するホワイトガーデンは日当たりがよく、暑さが苦手なパルセットは育ちにくい年もあり、手入れには苦労しています。しかし手の掛かる子ほど可愛いものですね。
主張することなく、控えめに咲いているパルセット。ホワイトガーデンでぜひ見つけてあげてください!

ガーデン内で、パルセットをご覧いただける時期

最盛期は5月〜6月。
6月下旬以降、剪定を繰り返しながら、秋頃までご覧いただけます。


沢山の花をつける、パルセット(2020年6月2日・クレマチスガーデン)


ガーデナー 三浦
白く洗練された花弁に、うっすらとピンク色の筋が入っています。クレマチスガーデンでは、石垣壁、ポール仕立て、《天の階段》周辺などでご覧いただくことができます。

[フルディーン]
Huldine
系統:遅咲き大輪系
花の咲き方:新枝咲き
剪定方法:強剪定
開花期:5〜10月
草丈:3〜4m
花径:6〜8cm
花色:白
作出国:フランス

試行錯誤を重ねるうちに・・

私が担当しているポール仕立てゾーンにあるフルディーンは、2003年から植栽されていますが、最初はポールの上部分にしか花が咲かず、剪定場所を変えたり、金子明人先生にアドバイスを頂いたり、ポール全体で咲かせるために、試行錯誤を重ねてきました。そしてこの数年でようやく、ポールの下部分にも咲くようになりました! 苦労しましたが、だんだん可愛くなり、とても愛着が湧いています。

ここがみどころ!

蕾から開くときには、全体が紫がかっていますが、完全に開ききると次第に白くなります。咲き始めの色がとても綺麗なので、ぜひ見てほしいです。
またフルディーンは、花弁が空を向いて咲いています。私も空を見るのが大好きなので、いつもフルディーンと一緒に空を見ているんです。

ガーデン内で、フルディーンをご覧いただける時期

最盛期は5月〜6月。
6月下旬以降、剪定を繰り返しながら、秋頃までご覧いただけます。


空を見上げるように咲く、フルディーン(2020年6月2日・クレマチスガーデン)


ガーデナー 矢野
遠くからでも目を引く、大きな花と淡い花色が見どころです。株が充実してくると、八重になるものもあります。緑のなかに映える上品で美しい色と形が気に入っています。クレマチスガーデンでは、ポール仕立て、フェンスボーダー、カナールなどでご覧いただくことができます。

[ルイーズ・ロウ]
Louise Rowe
系統:早咲き大輪系
花の咲き方:新旧両枝咲き
剪定方法:弱剪定
開花期:5〜10月
草丈:1.5〜2m
花径:12〜18cm
花色:薄いピンク
作出国:イギリス

ルイーズ・ロウとの出会い

クレマチスガーデンで働き始めてからクレマチスを知り、ルイーズ・ロウと運命の出会いを果たしました。とても気に入ったので、フラワーショップで開花鉢を購入し、家でもルイーズ・ロウを育てています。比較的扱いやすい品種で、少ないスペースでもコンパクトにまとまって咲いてくれます。

より美しく見せるために

私が担当しているフェンスボーダーでは、品種の特徴を生かしながら誘引の位置を変え、それぞれのクレマチスがより美しく、綺麗に見えるように工夫しています。クレマチスの写真を撮る方もとても多いので、全てのフェンスをフォトジェニックな場所にすることが、日々のモットーです。

ガーデン内で、ルイーズ・ロウをご覧いただける時期

5月中旬が見頃です。
秋にはほとんど咲きませんが、ご覧いただける場合もあります。


クレマチスガーデンで、初夏の開花シーズンの幕開けをエレガントに彩る存在(2020年5月12日・クレマチスガーデン)


ガーデナー 高嶋
白い花弁の先端に緑色が入っていて、スッキリとした花です。クレマチスガーデンでは、上部庭園、下部庭園各所でご覧いただけます。

[アルバ・ラグジュリアンス]
C.‘Alba Luxurians’
系統:ヴィチセラ系
花の咲き方:新枝咲き
剪定方法:強剪定
開花期:5〜10月
草丈:3〜3.5m
花径:4〜5cm
花色:白
作出国:イギリス

ここがみどころ!

白い花弁の先端に緑色が入ったり入らなかったりするのがとても素敵なんです。初夏から秋にかけて、剪定を行うことで繰り返し咲きます。一番花(6月頃)がいちばん緑がかっているので、ぜひ見て欲しいですね。
花自体がシンプルなので、他の品種と組み合わせやすいです。パステルカラーや紫色のクレマチスを組み合わせることで、花の美しさがいっそう引き立ちます。上部庭園のフェンスでは、アルバ・ラグジュリアンスと他品種の組み合わせにぜひ注目ください。

自宅でもすぐそばに

アルバ・ラグジュリアンスは、私がクレマチスガーデンで初めて心惹かれ、最初に購入したクレマチスです。自宅では玄関脇に植栽していて、いつも真っ先に出迎えてくれます。比較的扱いやすい品種ですが、枝数が多いのですぐにもボリュームが出てきてしまいます。適切に誘引するのがポイントですね。

ガーデン内で、アルバ・ラグジュリアンスをご覧いただける時期

最盛期は6月頃。
6月下旬頃、剪定を繰り返しながら、秋頃までご覧いただけます。


チケットセンター前に置かれたコンテナでは、こぼれそうなほど沢山の花を付けています(2020年6月8日・チケットセンター前)


ガーデナー 丸橋
テッセンは日本に昔からあり、クレマチスの総称として親しんでいる方も多いかと思います。ヴィエネッタは、テッセンを親に持つフロリダ系の品種です。テッセンとよく似ています。クレマチスガーデンでは、チケットセンター前、上部庭園、下部庭園各所でご覧いただけます。

[テッセン]
C.florida Tunb.var. sieboldiana Morren
系統:原種
花の咲き方:新旧両枝咲き
剪定方法:中剪定
開花期:5〜11月
草丈:2〜3m
花径:6〜10cm
花色:白

[ヴィエネッタ]
C.VIENNETTA ‘Evipo006’
系統:フロリダ系
花の咲き方:新旧両枝咲き
剪定方法:中剪定
開花期:5〜11月
草丈:2〜3m
花径:8〜12cm
花色:白
作出国:イギリス

ガーデンの顔として

チケットセンター前、上部庭園、カナール出口など、いろいろなところを担当していますが、お客様に喜んでいただき、ガーデンに興味を持っていただきたいと思いながら、いつも手入れをしています。「テッセン」は特にクレマチスの顔でもあるので、チケットセンター前にある鉢植えのテッセン、ヴィエネッタには特に気を配っています。

よく似ている2つ

テッセンとヴィエネッタは、色・形がとても似ています。ぜひその違いをじっくりご覧いただきたいです。気温の変化に弱く、立ち枯れしやすいので、暑い季節は特に気にかけています。テッセンもヴィエネッタも花びらが落ちた後、紫色のしべだけでも美しいので、すぐに摘まず、長く楽しんでもらえるようにしています。

ガーデン内で、テッセン、ヴィエネッタをご覧いただける時期

最盛期は6月頃。
6月下旬頃、剪定を繰り返しながら、秋頃までご覧いただけます。


左:テッセン  右:ヴィエネッタ
チケットセンター前には、2品種が隣同士に並べてあるので、その違いをぜひ見比べてみてください(写真は過去の開花の様子)



今後も定期的にガーデナーのお気に入りのクレマチスを紹介していきます。
どうぞお楽しみに。